kubernetesに自分のコードがマージされるまでのフロー

はじめに

こんにちは。kubernetes班のwhywaitaです。皆さんkubernetesやっていますか?

kubernetes を使う場合、アプリケーションをデプロイする際にミドルウェアの管理に悩むことがあり、その解決策として様々なアプリケーションが開発されています。1

その中でも私はHelmがお気に入りです。
自分のアプリケーションを含めた全てのデプロイをHelmで賄うのには向いていないように感じますが、アプリケーションで必要なミドルウェア(DB、KVSなど)を立ち上げる用途としてはかなり優秀なプロダクトだと思います。

そのHelmでインストールすることの出来るミドルウェアの単位をchartと呼びます。chartが集まったものをリポジトリと呼び、 stable リポジトリと incubator リポジトリはGitHub上で公開されています。

GitHub上で公開されているので、もし何らかの修正を行いたい場合はPull Requestを送る事が出来るのですが、一般的に使われているフローではなく、一定のルールを満たす必要があります。
あまり日本語情報が無いように思ったので、今回は実際にkubernetes OrganizationであるHelmにPull Requestを送り、無事マージされるまでのフローを書きます。

バージョン

Pull Requestであるためそれほどアプリケーションのバージョンは依存しませんが、念のため作業環境のバージョン書いておきます。

  • kubernetes: v1.10.3
  • kubectl: v1.10.4
  • helm client: v2.8.2
  • helm server: v2.8.2

Pull Requestフロー

まずは、kubernetesが定めるContributor License Agreements、略してCLAの提出が必要となります。
これはkubernetesにコントリビュートする際に満たすべき制約に、コントリビュートした全員が承諾する事を担保するものです。

kubernetesはCloud Native Computing Foundation(CNCFと呼ばれます)に入っているプロジェクトの1つであり、CNCFはLinux Foundationに入っているプロジェクトの1つです。
このような関係を持つため、kubernetesのCLAは現状Linux Foundationのシステムを用いて、CNCFのCLAを提出すれば認可されます。

Linux Foundationアカウント発行

Linux FoundationのCLAには個人向けと企業向けの2種類が存在しています。私は個人としてCLAの提出を行ったため、今回は個人向けの作業をお伝えします。

下記のURLから、Linux Foundationのアカウントを発行します。
https://identity.linuxfoundation.org

ソーシャル連携でアカウントを作成しても良いですし、Linux Foundationのアカウントを新規に作っても構いません。
最終的にLinux FoundationのアカウントとGitHubのアカウントを紐付ける必要があるため、GitHub連携でログインしておけば若干手間が減るかもしれません。
私はLinux Foundationのアカウントを作り、その後GitHub連携を行いました。勿論この方法でも問題無くCLAの提出は可能です。

アカウント作成中にFirst nameとLast nameを入力する欄がありますが、基本的には公開されず、usernameで書いた部分のみ公開されます。

また、この時設定するメールアドレスにはGitHubのコミット上で用いているメールアドレスと同じものを利用するようにしてください。コミットとの紐付けに利用しているようです。
現在利用しているメールアドレスは以下のコマンドで確かめられます。

$ git config user.email
whywaita@whywrite.it  # 私の場合

最後に、GitHub連携以外の方法でアカウントを作成した場合は、こちらからGitHub連携を追加しておいてください。

CLAを提出し、CNCFグループに入る

以下のURLから、自分のLinux FoundationアカウントをCNCFグループに参加させることができます。

https://identity.linuxfoundation.org/projects/cncf

アカウント作成、およびGitHub連携が既に済んでいる場合、以下のような画面が出ます。

名前とメールアドレスが間違っていなければ、そのままSubmitを押します。
すると、登録しているメールアドレスにHelloSignというサービスからメールが届きます。

HelloSignは電子署名システムの1つで、実際に紙を印刷してサインをせずともWebブラウザのみで電子署名が行えるシステムです。
Review & Signのリンクからページに飛ぶと、CLAで承諾すべき項目が実際に表示され、問題無ければ項目を埋めて提出します。

CLAの文章自体はこちらに公開されています。
HelloSignのサービスを利用したくなかったり、紙を用いた証拠が欲しい場合は、PDFをスキャンして info@cncf.io に送信したり、Linux Foundationのオフィスに国際郵便で送付することも可能です。CLAの文書にどのような手法を用いられるのか記載されているので、CLAを提出する際にご確認ください。2

HelloSign上でCLAを提出した場合、提出に成功したことがメールで通知され、HelloSign上のシステムでも提出が完了したことを確認できます。
私が提出した時は、数分程度で提出完了のメールが届きました。

これにてCLAの提出は完了です。

Pull Requestの作成

これでようやくコードを書くことができます。
ここからは実際に私が出し、マージされたPull Requestを例としながら説明していきます。

Pull Requestの作り方(Forkして、ブランチを切って、など)は一般的なフローと同じですので割愛させて頂きます。

実際にPull Requestを出すと、k8s-ci-robotというユーザが自動的にラベル付けなどを行ってくれます。
このユーザはkubernetesチームが用意した自動化用のbotシステムであり、そのPull Requestの状況等を管理してくれます。

3

CLAの提出が正しく出来ていれば、この段階でこのようなメッセージが来ます。

レビューしてもらう

Pull Requestが自分の中でレビューして貰って問題無い状態になったら、レビューアーをアサインしてレビューしてもらいます。

レビューアーに指定するべき人がランダムで提案されますが、基本的には担当者全員アサインして良いようです。
この時のアサイン対象者ですが、誰でも良いという訳ではなく、chart毎に指定するべき人が決まっています。例えば私が今回出したdatadogであれば、以下のURLにあるOWNERSファイルに書かれています。

https://github.com/kubernetes/charts/blob/master/stable/datadog/OWNERS

GitHubのシステム上、ブラウザ上からアサインすることも技術的には可能なのですが、アサインの状態を可視化するためにk8s-ci-robotにアサインしてもらう運用になっているようです。
/assign コマンドを実行します。実際のコメントはこちらです。

その後はレビューアーの指示に従い、修正や議論を行います。4

実際にマージする実行をするのはk8s-ci-robotですが、レビューアーに lgtm ラベルと approve ラベルを付けてもらう必要があります。
その時々でラベルの付ける順番などは変わるようなので、適宜レビューアーに聞いてみると良いかもしれません。
私も聞いた結果ラベルが付与されました

最終的に問題がないと判断されれば、k8s-ci-robotによってマージされます!

おわりに

このフローを踏むことで、無事kubernetesグループに貢献することが出来ました。
OSSを使うだけでなく、OSSに貢献することで、OSSの素晴らしいライフサイクルを回せていければと思います。

また、本記事公開以降コントリビュート手順が変更される可能性があります。
もし不明な点があった場合は、原文であるこちらを参照してください。

HERP広告

この記事は株式会社HERPの勤務中に書かれた物である。
株式会社HERPでは今後もOSSに貢献し続けます。

株式会社HERPは様々な職種での人材を募集しています。

また、この広告箇所は本の虫のオマージュです。


  1. Kubernetes YAMLの壁 | SOTA 
  2. ちなみに私が提出した際のCLAはこのコミットです。 
  3. robotは既に終了した自分のコメントに関しては消してしまうので、私のメーラーに来ていた通知メールのスクリーンショットです 
  4. ここが一番難しいかもしれませんね… 

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